負けたくない
アルコール依存だかなんだか知らんが、私はこんな意味不明なドロドロしたものに負けたくない。
今朝、目覚めたらパートナーが 壁ぎわに座って覚醒しようと闘っていた。傍目には心を失った人間、いや、その様子はもはや人形のようであり、しかし声を掛ければ返答はある。ある程度の覚醒はしており、おそらく内なる自分とせめぎあっているのだ。私と同じだ。
しかし私は自分に対してそうなのと同じで、どのように手助けして良いのかわからない。大切な人なのに、決して失ってはならぬ人なのに。
私と彼女とが積み上げた年月はまだ僅かだ。しかしその間、私は初めて、己以外の人間が生きるために必死で足掻く姿を目の当たりにした。ただ興味のある仕事に就き、普通に生きたいだけなのだ。でもそれを病が阻む。
程なく、私も依存性や鬱と向き合うことになった。辛いことだったが、そのことによって彼女の苦しみはより一層、私に強く伝達された。
同時に、彼女と比して、己の甘さや対峙しているものの薄っぺらさも感じた。ただ私の方が少しだけ器用にいきてきただけだ。
なんにせよ、私は私の足で立ち上がり、家族を支えねばならない。彼女の直近の不安を取り除き、ゆっくりとでも良いから彼女に寄り添い、何かしらの力になりたい。言葉を交わし、理解し、心に、身体に寄り添い、どちらかが死ぬまで一緒に生きてゆきたい。私はあの人のことを愛しているんだ。絶対に離れたくない 人だ。
今の自分の状態から鑑みて、たとい大切な人のためであろうと他者のために何かしようなどおこがましく感じる。しかし、そういった感情を否定する意味はない。
私は駄目な人間だ。
しかし、守りたいものがある。家族だ。家族のために立ち上がれるならば、それは素晴らしいことじゃないか。一人ではないということがどれだけの力を持っているか、今の私には計り知れない。
所詮、私なんていなくたって世の中は平然と回ってゆくのだ。時代に足跡や名前をを残す必要だってない。
ただ、今、己よりも大切な人がいて、その人を守りたいと思う私がいる。
いつか彼女が安寧の中で微笑む顔が見たい。私は弱い人間だけれども、そのためにこの世界に強くアクセスしなければ。何を犠牲にしたって構わない。
私は、彼女のことを愛している。あの人は私の身体と心の一部であり、私と共に豊かな果実を包むひとつがいの殻である。
一人ではない。
私は恵まれているんだ。
勇気を出して、手を伸ばせ。