鬱(うつ)病・アルコール依存症・日々のつぶやき

2014年、うつ病・アルコール依存症デビュー。うつの波にぐっと耐えつつ、前向きな日々を送っています。読んで楽しい気持ちになってもらえたらうれしいです。

記事(文章)を最後まで読んでもらうために

もうずいぶん昔のことになるけれど、文学の作家を目指していたことがある。

近所に住んでいた作家先生に師事し、たまに作品が仕上がると持っていて読んでもらっていた。「作品が仕上がると」なんて言っているくらいだから、制作のスピードは誰よりものんびり。先生には毎回「論外!こんなつまんねぇのに1ヶ月もかけたのか!?どうせつまんねぇなら4つくらい持ってこい!どんどん持ってこいボケ!」と言われた。

 

毎月末の土曜日には、老夫婦が営む喫茶店に先生と弟子が集まる定例会があった。定例会では多くの弟子がひと月で書き上げた自信作を持ち寄り、先生からこてんぱんにやられるという儀式が行われ、それが済むと皆で軽食をつつきながら夕飯どきくらいまで小説談義に花を咲かせるのだった。まれに先生が知り合いの有名作家を連れてくることがあり、そんなときは深夜や明け方まで業界話で盛り上がった。

 

あるとき、そんなゲストの作家先生から突然「君はどうして作家になりたいの?」と聞かれた。たぶん明け方のことで、外が少し明るくなってきていたと記憶している。わたしは眠くて船を漕いでいたのだろう。先生はそんなわたしを見かねてか、急に話を振ってきたのだった。

 

わたしは「甚平着てても髪伸ばしてても変人と思われなさそうなので」と答えた。作家先生は「なるほどね」と受けると、また別の作家志望の子におなじ質問をするのだった。そのうち質問が一周回ると、作家先生はふたたびわたしのほうを向いて「あー、僕は変人に見える?」と聞いた。わたしは「変人っぽいです」と答えた。作家先生はハハハと笑って、「これで意外に常識人なんだぜ?」なんて言っていた。わたしも雰囲気につられて笑った。

 

作家界隈の集まりは楽しいものだった。しかしわたしは当時サッカーに夢中だったので、定例会とは自然に距離ができ、そのうちすっかり行かなくなってしまった。そうしているうちに先生が亡くなった。通夜の席で久しぶりに他の弟子と顔を合わせると、「おまえ、もう書かないの?」とか「先生、心配してたぞ。なのにお前は定例会に顔も出さねえで」なんてずいぶんと責められた。ただただ申し訳なくて、何か言われるたびにペコペコと頭を下げて謝罪の言葉を口にした。肩身が狭かった。

 

通夜が終わり、翌日には告別式も終え、わたしは日常に戻った。今後の定例会には先生と親しかった作家さんがしばらくの間来てくれることになったと聞いた。わたしは結局一度も行かなかった。本はたくさん読んだけれど、作品を書くことはなかった。

 

何年かしてから、ふと思い立って文学の新人賞に応募した。結果はもちろん落選。けれども担当者から「あなたには書きたいものがあるね」と言われ、都内の喫茶店に呼び出された。いそいそと出て行くと、気難しそうな男性が待っていた。わたしは「どうも」と挨拶をして、席に着いた。相手の男はわたしの原稿を鞄から出すと、「あ、これ返しておくね。普通は返送なんだけど、せっかくなんで。ご苦労様。」と言った。落選作品。わたしはふと恥ずかしくなってそれをすぐに鞄に仕舞った。喫茶店での話はそんなにたいした内容ではなかった。「また書いたら見せてね」とは言われたけれど、社交辞令だろう。わたしはまた書くことから遠ざかった。

 

新人賞には毎年膨大な数の応募がある。まず文章がまともでないのを取り除くと作品は半分以下になる。それを下読みと呼ばれる担当者がバーッと読んでいく。作品が100ページあろうと500ページあろうと、書き出しがダメならその時点で落選が決まる。下読みは一人当たりで考えても膨大な作品数が振り分けられるから、最初の数行で明らかな駄作とわかるようなものを全部読む暇などないのである。

 

小説において、書き出しはとても大事だ。先生もよく言っていた。「よっぽど話題の作品でもない限り、一般の読者だって書店でパラパラっとやってよ、下手すりゃあ数行眺めてツマンネっつって永遠にバイバイだよ。逆に最初の数行でガッと捕まえちまえば一応は手に取ってもらえる。まぁ、作家は本出た時点で印税もらえるけどよ、売れねえんじゃ次がねえだろ。だから大事なんだよ、書き出しってのは。おめえのは最後まで読んでもらえるのが前提になってんだ。だから書き出しが甘ぇし緊張感もなにもあったもんじゃねえ。こんなんじゃ賞なんて永遠に取れやしねえよ」

 

このときはあまり意味がよくわからなかった。

このクソジジイ好き放題抜かしやがって……とか思っていた。

 

あれから20年以上経った。

副業としてデザイナーをしながら、IT系の会社やらネットショップやらで社員として働いた。特にネットショップの運営をする中で興味を持ったSEO検索エンジン最適化)やWebライティング、コピーライティングなどについては独学ながら勉強し、いくつかの関連資格も取得した。数百の自社商品の商品説明やキャッチ、メールマガジン、お客さま対応など、文章を書く場はいくらでもあった。

 

「ネットショップの文章」は常に相手のあるものだ。もっとも重要なものは「資料請求してもらう」、「商品を購入してもらう」、「会員登録してもらう」など、相手に行動を促すための文章だろうか。(CTA=コール・トゥ・アクションという)

 

具体的には顧客のペルソナ(仮想の人物像)を立て、設定した仮想の人物に対して、いつ、どのようにアプローチしたら自分たちの望む行動を取ってもらえるかを綿密に練って、丁寧にウェブページに展開してゆく。UPしたページはアクセスデータを取り、検証し、質を高めていく。これを繰り返しながら質を高めていく。

 

クレームに対する返信、返答には、相手が何に対して怒っているのか、何に対して不信感を抱いているのかを汲み、その部分をケアする文章や回答を送らなくてはいけない。なんでもかんでも謝ればいいというものではない。適当に謝罪することが、相手の怒りに火を点けることもあるのだ。

 

約8年間、ネットショップの運営に携わった。一流どころのコンサルとも知り合うことができ、たくさんのことを教えてもらった。学び、実践する中でわたしの文章に対する考えかたはすっかり変わった。今ではかつての自分がたとえ寡作であったとしても、作家になれなかっただろうなぁ……と半ば確信的に思う。

 

 

……というわけで、やっと一段落。

ここまでの話をブログの運営に役立つように応用できないか、考えてみよう。

あっ、そうだ。以下は基本的に個人の日記ブログとかよりも、積極的に集客したいブログに向いた内容になっています。でも、日記やつぶやきのブログにも役に立つように努めて書いてみます。

 

1.「タイトル」、「書き出し」が大事

前述の新人賞にしたエピソードに「書き出しがダメならその時点で落選が決まる」と書いた。また、先生の「書店でパラパラっとやってよ、下手すりゃあ数行眺めてツマンネっつって永遠にバイバイだよ。逆に最初の数行でガッと捕まえちまえば一応は手に取ってもらえる」という言葉。

 

とにかく、書き出しが大事。全文を読んでもらえるかどうかは、書き出しで興味を惹けるかにかかっている。最初の段落で「つまんなーい」と思われればただちに試合終了。読者はあっという間にそのブログを去ってしまう。

 

しかし、もっと前の段階で読者の目に触れる文章がある。それはタイトル(表題)だ。

 

1-1.読まれるタイトルの作り方

読者はさまざまなルートを経てブログにたどり着く。例えば検索エンジン。例えばはてなブックマーク。例えばはてなブログの人気記事のコーナー。いずれにせよ、最初に目にするのは「記事タイトル」だ。検索上位になろうと、はてブのトップページに表示されていようと、タイトルが刺さらずクリックしてもらえなければ永遠にさようならだ。やだーいかないでー!

 

タイトルについて、縁のない方にはかなり専門的な内容になるけれど、以下の記事が参考になると思う。もしSEO等に明るくない方でも、恐れずに専門的な内容は読み飛ばして、わかるところだけ読んでもらいたい。きっと参考になるはずだ。どれも超有名サイトなので、既読の方もいると思う。

 

 

 

 

3つ目のの記事の「ウケるタイトルを作るのに大切な、たった1つの真実」なんて、今となってはいやらしさすら感じるけれど、今でも有効なことは確かだ。「◯◯するならこれ!簡単に◯◯できる驚きの◯◯術10選!」なんてのは死ぬほど見かけますね。わたしもやりました。(笑)

 

 

……絵が悪いんじゃないの?(笑)

 

個人の日記ブログなどでは、タイトル作りにこういった手法を使う必要はない。もちろん、使ってもよい。直感的に浮かんだ言葉をタイトルに付けたり、「無題」にしたり、本文とまったく関連性のないものにしたってまったく問題はない。

 

1-2.どんな書き出しがいいの?

ECサイトではファーストビューに表示されるコンテンツを厳密に検証する。ファーストビューとは「閲覧者の画面にWebページを表示した時に、最初に表示される領域のこと」だ。ブログの場合は書き出しの段落や目次、あるいは画像が表示される領域だ。

 

商業的なサイトとは違い、ブログの場合は表示された領域だけパッと見て離脱することはないだろう。少なくとも本文中の最初の段落くらいまでは目を通すはずだ。つまり、ファーストビューというより、最初の段落あたりまでで記事を最後まで読んでもらえるかどうがの決まると思われる。

 

書き出しについて考察している記事があった。

 

 

さっそく読んでいこう。このブログ……あらゆる場所でギャル画像が不必要かつ異様に多用されていて噴く。何が目的なのw……しかし書かれている内容は極めて真剣だ。順に読み進めて……読み……進めtプフォウwもう無理ww!(噴き出しつつクローズ)

 

本文最初の段落にたどり着く読者は、タイトルを読んで何かしらの興味をもった人間だ。だから、書き出しがタイトルにそぐわない内容だと離脱されてしまう可能性もある。タイトルが「アクセスを3倍にする魔法のコーディング術」なのに、最初の段落で延々とエビピラフづくりに失敗したエピソードを書いていたりすると、読者は望む情報がないと判断して離脱してしまうことがある。だから、タイトルと本文の冒頭部分は一連の文脈を持っていることがひと目で分かるようにしなくてはいけない。

 

ECサイトなどでは、トップページのバナーと誘導した先のランディングページ(この場合バナーをクリックすると表示されるページ)が同じ内容であることをユーザーに伝えるために、同じ画像、同じロゴ、同じカラーなどを使って両者をデザインするというのが極めて一般的だ。

 

そういう意味において、本文の前に目次を設置することは、極めて有効であるといえる。タイトルとの連携も深く、しかも本文の内容を鳥瞰することができるからだ。読者は目次を確認してから、「この記事はタイトルの通り、自分が興味を持った内容を伝えてくれる」と安心して本文を読み進めることができる。

 

個人の日記のブログなどでは、こんなことはまったく気にする必要はない。けれども、多少気にすると「そこそこしっかりした日記ブログ」のような評価を得られるかもしれない。

 

2.本文の書き方

タイトルをクリックしてもらうことに成功し、書き出しで離脱されることも回避し、読者が熱心に本文を読み始めてくれた。ここで必要なことは、引っかかりなく最後まで読み通せることだ。つまり、読みやすさだ。まわりくどい言い回しや不必要に難解な言葉を使うことで、読者が「記事から情報を得る」プロセスに余計な障害を作らないことだ。

 

「腑に落ちる」という言葉がある。

誰でも本やネットの記事などを読んで、「ああ、そうだったのか」と腑に落ちた経験は持っているだろう。あのときの喉元からスッと臓腑に落ちる感じ。あれを邪魔しないように文章を作ってゆこう、ということだ。のどごしの良い文章は読者に快感を与え、その快感は読者を再びあなたのブログに向かわせるだろう。

 

そのための文章作成技術は書籍やネットでいくらでも知ることができる。わたしには人に文章の書き方を教えられるような技能はない。こればかりは良書で学びながら、どんどん書いてゆくしかない。そして書くだけでなく、たくさん読まなければいけない。文章制作と読書は両輪である。文章力を付けたいならば、どちらも欠かしてはいけない。

 

わたしのおすすめの書籍は以下の通りだ。

 

    

 

左2冊は簡潔に読みやすい文章について解説していて、非常にわかりやすかった。本当におすすめ。一番右の本は今読み返してみたら文章ネタじゃなかった……でも、ブログ運営を考える上では面白い本なのでおすすめしておく。レビューも合わせてリンクしておく。

 

 

ネットにも文章制作に関して優れた記事はたくさんある。先に上げたバズ部さんの記事「文章のプロ直伝!素人でもプロ並に書けるようになる5つのテクニック」は大いに参考になる。他にも検索するといろいろ出てくる。

 

 

いい加減なものも多いけれど、有益なものもたくさんある。 クオリティーの低いハウツーものも、良いものと合わせて多読していけば、得られるものもある。あなたがもし文章を書くことにまったく自信がないのであれば、この際質は横においてどんどん読んでいこう。

 

2-2.個人の日記・つぶやきブログはどうしたら……

わたしのブログもそうだけれど、自由にやるのが良いと思う。「自由にやるにしても文章は上手になりたい」というのであれば、上記の書籍やサイトなどを参考にしながらどんどん書けば必ず上達するはずだ。

 

 でも、生活のかかったアフィリサイトを運営するのでもないのなら、なるべく楽しく、けれどもネガティブからポジティブまで、思うままに日々書き連ねていくのが一番だと思う。ありのまま書いてくれる方が人となりも伝わってきて読む方も楽しいし。それに、日記ブログなどの個人的な文章にもっとも必要なのは、技術としての文章力よりも、感情豊かで生き生きとした輝くような表現だ。

 

もし日記ブログをたくさんの人に読んでほしいと思うならば、他の日記ブロガーとSNSや相互ブックマークなどで交流したり、毎日欠かさず更新するほうがよい。楽しい居場所を作るには不特定のアクセスを集めることよりも親しい仲間たちや趣味嗜好の似たひとたちとコミュニティを作るのが一番だ。物言わぬ1000万人の読者より、「すごいねー!」と言ってくれる100人の読者のほうがずっといい。

 

どういうふうに書いたら読者に自分の感動や喜びが伝わるか、一生懸命考えて書いてみよう。きっと自分だけの表現が見つかるはずだ。

 

 本日のまとめ

なんだか文章書ける人みたいな感じで書いてしまいましたが、お読みいただけばわかる通り、わたしも「上手な文章書きたーい!」と日々勉強している身です。この記事も8割がた自分に向けて書いています。

 

ネットに、書店に、世の中に良い文章を書けるようになるためのヒントは山ほどあります。みんなで文章力を磨いて、日本のコンテンツの質を向上させてゆきましょう!

 

今日は9時ころに予約投稿しているので、もう一度更新があります。

そっちでは「料理を美味しそうに撮影するテクニック」について書いたような気がします。