10年ぶりに腕時計をしてみて思ったこと
yahoo!オークションで落札した腕時計が届いた。
郵送(定形外)だったので、お届けはポスト。茶封筒に筆ペンぽいもので、宛名やらなんやらが書かれていた。引きちぎって開封すると、プチプチとうす紙に包まれた時計が布テープでグルグル巻きにされて入っていた。他には空気しか入っていなかった。お買い物の結果として送られる送付物としては、非常に味気ないものだった。
ともかく包を引きちぎり時計を取り出した。
思っていたのよりずっと素敵な雰囲気の腕時計が姿を表した。盤面は思っていたのより少し小さかったけれど、この時計の持つ「英国軍使用のアンティークウォッチ」の名に恥じないフォーマルかつタフな印象は極めて好ましいもののように感じた。
わたしが落札したオークションとは違うけれど、別のオークションではこんな説明がされている。
シンプルなのに非常に美しい時計をつくるブランドとして定評があるTIMESTARですが、これは代表作です!是非。
ムーブメントは当時のものをそのまま使用しておりますが、 ケースは磨きこま艶々してれて、ダイヤル(文字盤)はリダン、再生をして風防、ベルトは新品に換えております。経年による小傷などは見られず、非常に綺麗な状態です。当時のデザインの物を美しく使っていただけると思います。
。
◆ ブランド TIMSTAR
◆ 年代 ........ 1960 代
◆ ケース直径 ,, 縦42mm( ラグ含む) × 横 33 mm (リューズ含まず)
◆ ラグ幅 .. 18 mm
◆ ケース .. ステンレス
◆ ベルト 新品 ..
◆ その他 .. .. 17 jewels .
『アンティーク ウォッチ』
★ 現代のクオーツとは違いゼンマイをつかった機械式の時計です。
1960年代。なんと素敵なのか。
ゼンマイを巻いてみた。チッチッチッ……と小さな音を立てて秒針が動き始めた。1秒間に4回くらい動いているようで、繊細な動きが秒針自体の細さと相まって、なんとも美しく時間を刻むのである。これが1200円だと……すき家で牛丼を注文したら松阪牛の炭火焼き丼が出てきて、さらにミス牛丼世界代表が純金のスプーンで最後の一口まで食べさせてくれるくらい得した気持ちだ。
腕に巻いて外へ。
「フフフ……どうですかボクのこの美しい手元は」なんて思いながら外を闊歩した。おおっと、あれはSEIKOですか?性能は間違いないけれど、わたしのTIMESTAR様の歴史の前では赤子同然ですなHAHAHA!うむ、こちらにはG-SHOCK!ゴツくて多機能でかっこいい!だがしかし真の美はシンプルさの中にあるのですよ小僧。ぬおっ!あれはオメガ!!どうせレプリカに決まってる!本物なら……暴走ママチャリにはねられろ!(激しい嫉妬)
なんて、すれ違う人たちの時計を物色しつつ、わたしは久しぶりのマイウォッチを堪能した。腕時計、楽しい。
ちょうどこんな記事が出ていたのを思い出した。
わたしとしてはずいぶんタイムリーな記事。
内容はまさしく表題の通りだったのだけれど、時計を購入するにあたり「自分が時計に求めるもの」をきちんと整理、把握してから購入に臨んでいることがとても素晴らしいと感じた。あと、手首の毛がワイルドだった。男らしい。
超高級腕時計のスーパーコピー(レプリカ)は相変わらず欲しい。
でも、1200円で落札したアンティーク品によって、スタンスは少し変わった。超高級腕時計と、そうでない腕時計は所有することの意味合いが違うんだ。
超高級腕時計を身につけるということは、その人のバックボーンやライフスタイル、ポジション、パーソナリティーなどを、身体全体で表現するということなのではないだろうか。時計単体ではなく、時計も含むその人全体でもって、相手に安心感を与えたり、信頼の根拠になったりすることもあるだろう。いうなれば「きちんとした身なり」の一部なのでは……なんて。
対して普通の腕時計は、機能とアクセサリーとしての美しさや楽しさを目的に気軽に身に付けるものだ。例えば市民プールにおいて、赤のブーメランパンツ一丁でGショックを装着していても違和感はない。しかし腕に付いているものがパテック・フィリップの腕時計だったならばどうか。時計好きの監視員ならば、ショックのあまりもう二度と救助のできない体になってしまうであろう。
とはいえ、この世は所詮人それぞれ。
高価であろうとなかろうと、モノを身につけることにルールなんてない。人を不快にさせたり、自分が不利になったりという使い方さえ避ければ良いだけだ。
「若者の腕時計離れ」なんて記事もあるけれど、それはメーカーが「腕時計なんてなくても困らない。スマホあるし。」という人たちに「やべええええあの時計欲しいいい!!ローン組んででも欲しいなぁ!」と思わせられないのが悪いんじゃないのでしょうか。
腕時計を久しぶりに身につけてみて、わたしはとっても幸せな気分になった。うつの反動もあるのだろうけれど、すごくワクワクして嬉しくて、心が踊った。もしこれがパテック・フィリップの時計だったら、わたしは完全武装して槍を持ち、部屋の片隅で死ぬまで腕時計を守り続けるだろう。要するに高級腕時計は今のわたしの身の丈には合わないのだ。買えないし。
機械式の腕時計が立てるチッチッチッ……という音、本当に心地よい。やっぱりレプリカはいらないかな……。